成瀬 康
所属:
情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所
脳情報通信融合研究センター
脳機能解析研究室
室長
その他の所属:
大阪大学大学院情報科学研究科 招へい准教授住所:
〒651-2492 兵庫県神戸市西区岩岡町岩岡588-2Email:
y_naruse at nict.go.jp私の研究室では主に脳波、脳磁界を利用した非侵襲脳計測による神経科学的、神経工学的な研究開発を行っています。近年、BMI技術と言った脳情報通信技術が急速に進歩しています。しかし、現状ではこの脳情報通信技術は、多くの場合、実験室内、もしくは、特定の病院内といった限られた環境でしか使うことが出来ません。私は、この脳情報通信技術をどのような環境でも使えるように進歩させることで国民のquality of lifeの向上を目指しています。
私の研究室では主に以下のトピックについて研究を行っています。
1. 一般的な環境でも簡易に脳活動計測ができる脳波計の開発。
現代社会において、一般的に生活している環境は様々な電磁的なノイズに満ちています。この電磁的なノイズは脳の微少な活動を計測している脳波計測を困難にします。また、一般的な脳波計は、脳波計測時にベタベタした伝導性のペーストを頭につける必要があります。これらの問題を解決するために、私の研究室では、一般的な環境でも伝導性のペーストなしで脳波計測を可能とするモバイルワイヤレス脳波計を開発しています。この研究は産学官連携で行っており、小型化されたモバイルワイヤレス脳波計、伝導性ペーストを必要としない電極に関してはすでに日本企業に技術移転を行っており、その企業から製品として発売されています。
2. 脳波、脳磁場を利用したアプリケーションの開発。
電磁的なノイズは、脳波計といったハードウェアレベルでの除去とともに信号処理というソフトウェアレベルでの除去も必要となります。私の研究室では時間周波数解析、機械学習、ベイズ推定といった様々な手法を用いた信号処理手法を開発しています。開発した信号処理手法は脳磁場計測装置を利用して神経科学的に検証した上で、我々が開発している脳波システムに実装しています。そして、この脳波システムを利用することで、医療、教育及び情報通信といった様々な分野で利用出来るアプリケーションの研究開発を行っています。
3. 脳波、脳磁界ダイナミクスに関する研究。
現在の脳波、脳磁場を用いた研究開発では、多くの場合、現象論のレベルでの議論が多くされており、どのようなメカニズムでその現象が発生しているかのダイナミクスまで踏み込んでいる研究はあまりありません。しかし、脳波、脳磁場のダイナミクスを知ることは脳波、脳磁界によって得られる波形の意味をより深く理解することにつながるため、脳波、脳磁界を利用した研究にとって非常に有用となります。私の研究室では脳波、脳磁界のモデル化を行い、それを検証する実験を行うことで、脳波、脳磁界のダイナミクスの解明を目指しています。
主要な業績:
Watanabe H, Nakajima K, Takagi S, Mizuyama R, Saito M, Furusawa K, Nakatani K, Yokota Y, Kataoka H, Nakajima H and Naruse Y,Differences in Mechanical Parameters of Keyboard Switches Modulate Motor Preparation: A Wearable EEG Study. Front. Neuroergon. 2:644449, (2021).
Chang, M.,Ando,H., Maeda, T., Naruse, Y.,Behavioral effect of mismatch negativity neurofeedback on foreign language learning. PLoS ONE. 16(7), e0254771 (2021)
Yusuke Yokota, Yasushi Naruse, Temporal fluctuation of mood in gaming task modulates feedback-negativity: EEG study with virtual reality , Front. Hum. Neurosci. 15: 536288, (2021).
Ming Chang, Hiroyuki Iizuka, Hideki Kashioka, Yasushi Naruse, Masahiro Furukawa, Hideyuki Ando, Taro Maeda, Unconscious improvement in foreign language learning using mismatch negativity neurofeedback: A preliminary study. PLoS ONE. 12(6), e0178694(2017).