システム神経科学

CiNetは、主に人間の脳を対象とした先端計測施設を備え、システムレベルに焦点を合わせた基礎的な神経科学を中心に研究を推進しています。視覚と運動の制御についての研究に重点を置いていますが、痛み、多感覚の統合、高次の認知、意思決定、言語、社会神経科学などの領域についても研究を進めています。CiNetは、理研生命システム研究センター(QBiC)や阪大免疫フロンティア研究センター(IFReC)、あるいは、阪大の生命機能研究科、情報科学研究科、基礎工学研究科などと、近い距離を生かして緊密な連携研究を進めています。同様に、大阪大学病院の臨床部門との共同研究プログラムも複数展開しています。

情報通信技術

CiNetの重要なビジョンは、脳科学を情報通信技術(ICT)研究に応用する研究を進めることです。この研究の中心には、つぎのような鍵となる問いがあります。脳情報処理についての知見は情報ネットワークの計算や制御の分野に根本的に新しい考え方を創り出すことができるか? 複雑なネットワークの科学は、脳が行う情報処理を理解する一助となりうるか? 人間のコミュニケーションと脳内での情報処理とを理解することは、脳機能を基礎とした新しい形のコミュニケーション技術を生み出すか? 私たちの研究の多くはNICTが擁する豊富な専門的知見と充実した研究施設を礎としており、その研究は、ネットワーク科学、モノのインターネットIoT(Internet of Things)、センサーネットワーク、ウエアラブルなセンサー技術、量子ICT、ナノ&バイオコンピューティング、超臨場感や没入型コミュニケーションテクノロジーなどの幅広い領域におよびます。

ブレイン・マシン・インタフェース

CiNetが進めるブレイン・マシン・インタフェース(BMI)の研究は、侵襲的および非侵襲的な方法で行う脳への刺激や記録について進められています。侵襲的BMI研究の多くは大阪大学病院脳神経外科チームと連携して行われ、脳への刺激(例:皮質刺激、脳深部刺激、人工視覚)や脳活動からのロボットアーム制御などの課題に取り組んでいます。この研究は、脳情報デコーディングのための機械学習アルゴリズム、先進的ロボット工学、先端技術(3Dプリンターで造った人工神経、埋込み型微小情報処理装置、埋込み型ワイヤレス伝送システムなど)の先端研究開発と一体的に進められています。さらに、CiNetでは、より広範な領域にわたり積極的に非侵襲的BMIを活用する研究も進めており、この中には、家庭用機器から航空機器制御に至る非医療応用領域における制御やフィードバックのシステム開発も含まれています。

ニューロイメージング技術

CiNetでは多くの研究室がニューロイメージングに関する物理学や技術の基礎研究を行っており、高磁場fMRI、統合型PET-fMRI、磁気共鳴分光法(MRS)および高密度近赤外線分光法の研究を進めています。位相差脳血流イメージング、温度機能イメージング、神経線維機能イメージング、脳幹神経核機能イメージングなどの次世代イメージング技術の確立を目指しています。MEGとfNIRSなどの先端的計測から得られるビッグデータを解析するための新しい統計的手法の研究開発にも取り組んでいます。

ロボット工学

CiNetが進める脳研究に基づくロボット工学研究は、次の3つの目標を目指しています。第一は、人間の行動や生活を支援するロボットシステムの開発であり、これはリハビリや運動訓練での応用や重篤な麻痺のある患者へのBMIと組み合わせた応用などの臨床応用を念頭に置いています。第二に、脳の情報処理に学んだアルゴリズムを使用して、ロボットの運動制御を格段に向上させる研究開発を実施しています。第三に、人間とロボット間の相互作用とコミュニケーションの解明とその具体化の共存のために、遠隔地にある超精密な人間型ロボットを使って研究を進めています。この研究は、未来社会における人間とロボットの共存のあり方に示唆を与えるものと期待されています。