CiNet PI 西田 知史、BLANC Antoine(西田グループ)、CiNet PI 西本 伸志の論文が PLOS Computational Biology に掲載されました。
要旨:
工学の一分野である自然言語処理の研究で開発された「単語ベクター」と呼ばれる技術は、ヒト脳内における意味情報の表現(脳内意味表現)をモデル化する用途で、神経科学研究において広く使われてきました。これらの研究では、単語ベクター空間を介して脳内の意味情報を様々な単語の意味と結びつけることで、脳内意味表現のモデル化を実現しています。しかし、このようにして単語ベクターによりモデル化された脳内意味表現が、意味情報に対するヒトの知覚内容を本当に反映するかは明示的に調べられていませんでした。この問題を解決するため、私たちは単語ベクターを用いたモデル化により脳データから推定された単語の意味表現構造を、心理実験時の行動データから評価された単語の意味表現構造と比較しました。結果として、これら2種類の意味表現構造の間には統計的に有意な相関が認められました。この結果は、単語ベクターを用いてモデル化した脳内意味表現が、単語の意味に対するヒトの知覚内容を実際に反映していることを支持します。私たちの研究成果は、脳内意味表現のモデル化における単語ベクターの有用性を示唆しており、今後のヒト意味情報処理の探究に大きな貢献をもたらすといえます。
論文情報:
Nishida S, Blanc A, Maeda N, Kado M, Nishimoto S (2021) Behavioral correlates of cortical semantic representations modeled by word vectors. PLoS Comput Biol 17(6): e1009138.
https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1009138