2024年12月27日 Friday Lunch Seminar (英語で開催します)
12:15 〜 13:00
CiNet棟大会議室にて開催
演題:手から顔へ:現象学的観点から見た身体イメージの発達
東海大学
文化社会学部
教授 田中 彰吾
担当PI : 中野 珠実
Abstract:
この講演では、幼児期の身体イメージの発達過程について現象学的な観点から再考する。身体イメージは一般に、自己身体の全体についての心的な像として定義されるが、そのように自己の全身を捉える視点(パースペクティブ)はどのように獲得されるのだろうか。生後2年ごろに確立される鏡像自己認識を参照する限り、この視点は自己自身に由来するというより、他者との身体的相互作用を通じて獲得されたものと考えられる。では、そもそも他者の視点はどのようにして現れ、幼児の身体イメージ形成にどのように関与するのだろうか。幼児と養育者の二者相互作用に注目すると、生後9ヶ月ごろに確立される共同注意が重要な転換点になっているようである。幼児は養育者との共同注意を通じて、「人-物」「人-人」という二項関係を組み合わせて「人-人-物」という三項関係に参入する。現象学ではこの関係を「二次的間主観性」と呼ぶ。二次的間主観性の重要な点は、自己にも他者にも認知できる共通の世界が構築されることにあるが、身体イメージもまたそうした二次的間主観性の地平において構築されていく。この講演で提案したいのは、共同注意を通じて身体イメージが構築される過程には一定の順序があるということである。身体イメージの構築は、共同注意の向かいやすい「手」から始まり、それが脚や体幹へと広がって最後に「顔」で完了するという順序をおそらく持っているだろう。「手から顔へ」という演題もこの順序を示唆するものである。