Friday Lunch Seminar<on-line 開催>幕内 充:‟言語/算術/描画と指示的/喚情的意味論における記号認知の脳内メカニズム"

2023年3月31日  Friday Lunch Seminar (英語で開催します)
12:15 〜 13:00
On-lineで開催いたします。
→申込みは こちら
(締め切り:3月30日正午、参加要領は3月30日にeメールにてお知らせします。)

演題:言語/算術/描画と指示的/喚情的意味論における記号認知の脳内メカニズム

国立障害者リハビリテーションセンター研究所
脳機能系障害研究部
高次脳機能障害研究室
室長
幕内 充

担当PI:井原 綾

Abstract:
本講演では2部よりなる。①では言語・数学・描画に関する脳機能実験に基づいて、これらを包含する上位カテゴリーである記号に対する考察を述べる。②では意味論の2つのカテゴリーについての神経基盤について論ずる。

①まず、記号及び記号の統語論・意味論・語用論についての定義を行う。次に言語の最も重要な性質であると考えられている階層性について解説し、文の階層構造を処理する脳メカニズムがブローカ野であることを示唆する実験について述べ、続いて数学及び描画という記号列処理においても階層構造構築とブローカ野が関与することを示した研究を紹介する。

②文の意味には性質が大きく異なる2つのタイプがある。一つは事実を記述する指示的言語(referential language)であり、事態と比較して真偽を決定することが可能なタイプの客観的な文であり、科学的認識を可能にする。もう一つは真偽を決定すべき指示対象の存在しないタイプの文であり、「美しい」「良い」「痛い」などの主観的・情動的な判断を表し(emotive language)、文学や詩はもとより、倫理を表す言語である。我々は指示的言語と喚情的言語の脳基盤をfMRIで調べるべく、痛みを表す文で2つの言語を比較した。被検者に文の表す出来事あるいは痛みの表明から痛みの程度を想像させ、4段階で評価させた。

            1)私は月曜日に台所で足をぶつけた。(指示的言語)
            2)私は月曜日に頭がガンガン痛んだ。(喚情的言語)

結果、指示的言語では左半球の下前頭回、上側頭溝後部、楔前部、海馬傍回が、喚情的言語では右縁上回の活動が観測された。左半球の楔前部と海馬傍回は事態の像の構築(event construction)を反映したものであり、右縁上回は非指示的な文、すなわち喚情的な文を処理することに関与するものと考えられる。まとめると、本研究は指示的言語は左半球で、喚情的言語は右半球で処理されることを示唆する。