NICT CiNetの招へい専門員である小川 誠二氏が恩賜賞・日本学士院賞を受賞しました。
日本学士院賞は、学術上特に優れた研究業績に対して贈られるもので、日本の学術賞としては最も権威ある賞です。
受賞対象の研究題目: 機能的磁気共鳴画像法の基本原理の発見及び脳科学への展開
受賞理由:小川誠二氏は、1970年前後のヘモグロビンの構造と機能に関する研究の経験から、1989年頃、血中酸素の変化と磁気共鳴画像(MRI)の関連性を解明しました。すなわち、赤血球中のヘモグロビンは酸素が結合していない状態では常磁性体であるため、赤血球が小さいマグネットのようになり、血管の内外で磁化率に相違が生じ、磁気共鳴測定のための均一磁場にわずかなひずみを作ります。これが画像にコントラストをもたらし、その度合いは酸素を持たないヘモグロビンの量によることを発見し、この基本原理をBlood Oxygenation Level Dependent (BOLD) 効果と命名しました。さらに、脳活動が起きるとその近辺で血流が増加するという脳の生理現象に鑑み、「BOLD」コントラスト法で局所的な脳活動を非侵襲的に測定できる可能性を示唆し(1990年)、1992年に、小川氏らは普通の人の脳での局所的機能活動のMRI測定に成功しました。「BOLD」コントラスト法をベースに開発した高感度の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)は脳科学の広い分野で受け入れられ、色々な機能部位の同定や、高度な課題に対する脳の応答や認知機能障害などにおける機能部位間の活動の相関・連携、すなわち、脳機能ネットワークの解明へと進み、脳科学の進歩に大きく貢献しています。(日本学士院 表彰ページより)
日本学士院 表彰ページ https://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2025/031201.html#001