複数の仕事を並行して実行しなくてはならない場面は、日常生活において頻繁にあります。このような場面は、実験心理学の分野では「二重課題」あるいは「マルチタスク」と言われています。我々の脳がどのようにして同時並行的な情報処理を達成しているのかという問いは、「ヒトの情報処理能力にはどうして限界があるのか?」という根源的な問いを明らかにするため、そして、将来的には脳の情報処理能力を格段に向上させる技術に開発のために非常に重要な問題となっています。
今回CiNetの渡邉慶が執筆した論文では、二重課題場面をはじめとする脳の並列情報処理に関するこれまでの研究の流れを解説し、ヒト以外の動物に複数の処理を行う課題を訓練し神経活動を調べた研究を紹介しています。さらに、これらのヒト・動物において得られた数多くの知見から、「ヒトの情報処理能力にはどうして限界があるのか?」という問いに対して仮説を提示し、今後の研究が目指すべき方向を解説しています。
Toward an understanding of the neural mechanisms underlying dual-task performance: Contribution of comparative approaches using animal models.
Kei Watanabe and Shintaro Funahashi
Neuroscience & Biobehavioral Reviews (in press). DOI: https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2017.08.008
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0149763417301161