講演会: 大本 育実 “ノンレム睡眠中のマウスにおける単一細胞解像度の機能ネットワークは、空間的に混在したモジュールに分離される”

2024年4月25日(木) 
16:00 〜 
CiNet棟大会議室にて開催

演題:ノンレム睡眠中のマウスにおける単一細胞解像度の機能ネットワークは、空間的に混在したモジュールに分離される

理化学研究所 
脳神経科学研究センター
大本 育実

Abstract:
意識は脳領域間のダイナミックな相互作用から生まれると考えられている。睡眠中は意識の低下が起きるが、脳の機能的ネットワークはどのように変化するのだろうか。脳波や機能的MRIを用いて計測したマクロスケールの神経データを調査した先行研究では、機能的ネットワークが局所的なモジュールに分かれていること、これらのモジュールは覚醒時よりもノンレム睡眠時に分離していることが示唆されている。しかし、情報処理の基本単位である細胞レベルにおける大規模な機能ネットワークの様相は、ほとんど未解明なままである。本セミナーではまず、マウスの体性感覚野・運動野・高次連合野・その他の皮質を含むマルチモーダルな脳領域をカバーする視野内において、10,000以上の2/3層の神経細胞から大規模神経活動記録が可能な広域2光子顕微鏡、FASHIO-2PMを用いた睡眠中のマウスの神経活動記録について発表する。次に、記録された活動データの解析から計算された単一細胞レベルの機能的ネットワークが、脳の状態間でどのように統合・分離されるかをモジュール性の観点から調べ、そのモジュールが大脳皮質上でどのように空間的に分布しているかを調べた結果について発表する。広視野かつ細胞レベルで大規模に神経活動を記録することで可能になってきた、細胞単位の大規模ネットワークの意識との連関について議論したい。

文献:
1) Kiyooka, Oomoto et al., bioRxiv (2023)
2) Oomoto et al., STAR Protocols, 2, 101007 (2021)

経歴等の情報 :
2014年京都大学理学部卒業。2019年京都大学大学院生命科学研究科博士号(生命科学)取得。2019年から現在まで理化学研究所 脳神経科学研究センター 触知覚生理学研究チーム(村山研究室)にて博士研究員。