2018年8月6日(月)
13:30 ~ 14:30
CiNet 1F 大会議室
“ヒトの脳の情報処理の面白さって何?”
CiNet/情報通信研究機構
研究員
赤石れい
Host : 春野雅彦 (PI)
Abstract:
ヒトの脳の情報処理の特徴とは何であろうか。これはよく問われる問題ではあるが、未だにその答えは出ていない。今回の発表では発表者が携わってきたエコロジカルな視点を基にした研究からこの問いに挑戦してみたい。自然な環境下では時間も空間も連続的に存在するが、脳の情報処理を調べる人工的な実験室の環境では時間も空間も比較的に繋がりのない独立したものとして取り扱われてきた。
しかし進化の過程から脳の機能はより自然な連続的な空間や時間に関する情報を処理するために発達してきた。このような可能性を調べるため最近ではForaging theoryと呼ばれる自然な環境下での動物の行動を研究する枠組を基にし、実験をデザインする研究が増えて来ている。これらの実験のデザインの特徴は今現在の直面する状況だけでなく他の環境下で遭遇するであろう状況や変わりゆく環境下での変化した未来においての状況など、LocalとGlobalなどスケール(「規模」)の違う情報処理を内包しているところにある。
このような実験からは複数のスケールの情報処理を柔軟に組み合わせて脳が情報処理を行なっている様子が明らかにされて来た。ではこのような情報処理はこういった特殊な実験状況下でのみ現れるものであろうか。発表者が行った実験からは知覚意思決定と呼ばれる知覚情報に関する判断においても、試行間の判断の継続性の影響などが見られ、複数のスケールの情報処理が行われている事が示唆された。このような研究からは、ヒトの脳は常に複数のスケールの情報処理を用いより連続的で広がりのある環境に関する計算を行なっているということが示唆される。このような脳の情報処理の仕組みは生物学的なシステムの理解のみならず異なったスケールの情報処理を持つ人工的な情報処理のシステムの設計などにも意義があると考える。